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特定技能外国人への事前ガイダンス完全ガイド|義務内容・実施方法・注意点を徹底解説

特定技能制度において、外国人労働者を受け入れる企業が真っ先に実施すべきが「事前ガイダンス」です。本記事では、雇用契約や労働条件、入国手続き、生活支援など、受け入れ企業・登録支援機関が説明・確認すべき項目を整理し、義務的支援・任意的支援という枠組みに沿って詳しくご紹介します。さらに、実施方法や注意すべきポイントも併せて解説。これにより、トラブルを未然に防ぎ、外国人材の安心・定着を促すガイダンス実施体制を構築できます。

1. 事前ガイダンスとは?

事前ガイダンスの説明に入る前に、まずは特定技能における支援制度の概要を確認しておきましょう。

特定技能制度のもとで外国人材を受け入れる際には、受け入れ企業(=特定技能所属機関)が「外国人支援計画」を作成し、外国人が仕事や日常生活を円滑に行えるようサポートする義務があります。

この支援の内容については、出入国在留管理庁の公式資料に次のように示されています。

1 受入れ機関が外国人を受け入れるための基準
① 外国人と結ぶ雇用契約が適切(例:報酬額が日本人と同等以上)
② 機関自体が適切(例:5年以内に出入国・労働法令違反がない)
③ 外国人を支援する体制あり(例:外国人が理解できる言語で支援できる)
④ 外国人を支援する計画が適切(例:生活オリエンテーション等を含む)2 受入れ機関の義務
① 外国人と結んだ雇用契約を確実に履行(例:報酬を適切に支払う)
② 外国人への支援を適切に実施 → 支援については、登録支援機関に委託も可。
全部委託すれば1③も満たす。
③ 出入国在留管理庁への各種届出
(注)①~③を怠ると外国人を受け入れられなくなるほか、出入国在留管理庁 から指導、改善命令等を受けることがある。

外国人への支援に関しては、上記の「1の③④」と「2の②」が該当します。これらの支援内容をまとめた計画は、「1号特定技能外国人支援計画」と呼ばれます。

なお、この支援業務は受け入れ企業が自社で行うだけでなく、登録支援機関へ委託することも可能です。

そして、この支援計画の中で必ず実施しなければならない重要な項目のひとつが「事前ガイダンス」です。特定技能1号の外国人を受け入れる際に、雇用契約の締結前または在留資格変更前に、受入れ企業(所属機関)または登録支援機関が実施する説明・確認のためのガイダンスです。

目的は、外国人労働者が日本で働き生活するにあたり、仕事内容・労働条件・在留活動・手続き・生活支援・権利義務などをあらかじめ十分に理解・承諾してもらうことにあります。

事前ガイダンスの実施方法

実施方法として、対面、テレビ会議、ウェブ会議ツールによる実施が基本とされており、メールや文書のみでの説明は認められていません。実施後には「事前ガイダンス確認書」を作成し、外国人本人が理解したことを署名で確認する必要があります。

義務的支援と任意的支援とは

このガイダンスにおいて説明すべき支援内容には、「義務的支援」と「任意的支援」の2種類があります。義務的支援は制度上必ず実施しなければならないもので、事前ガイダンス自体もこれに含まれます。
一方、任意的支援は必須ではないものの、実施すると外国人の安心定着に寄与する支援項目で、ガイダンスで説明すれば望ましいものです。外国人材の定着促進やトラブル防止に効果的です。

2. 義務的支援の事前ガイダンス

以下では、事前ガイダンス内で説明・確認すべき「義務的支援」の主な項目を順に紹介します。説明漏れがあると、後のトラブルにつながりかねないため、内容をしっかり押さえてください。

業務内容や報酬額など労働条件の説明

受入れ企業は、外国人が就労する業務内容、雇用形態、就業場所、勤務時間、給与、手当、休暇・休日、昇給・賞与、就業環境など、雇用条件書あるいは雇用契約書の内容を丁寧に説明する義務があります。特に、日本語能力が十分でない人材の場合、会社名・勤務地などの基本的な情報すら理解しづらい可能性があるため、母国語や理解可能な言語での説明が重要です。

日本で行うことができる活動内容の説明

次に、取得した在留資格「特定技能1号」で行える活動内容と、できない内容についても明確に説明を行います。不許可の業務に従事してしまうと、本人・企業双方に法的リスクが生じるためです

新規入国・在留資格変更に関する手続きの説明

海外からの入国者には「在留資格認定証明書交付申請」やビザ申請、「在留資格変更許可申請」、「在留カードの取得」などの手続きが必要です。在国内在住で在留資格変更となる場合も同様に手続きが発生しますので、申請の流れ、タイミング、関係機関などを説明します。

保証金・違約金契約は禁止であることの説明

外国人材に対して、受入れ企業が保証金を徴収したり、違約金契約を結ばせることは認められておらず、事前ガイダンスではその旨を必ず説明し、同意も確認すべきです。

入社準備や費用負担に関する説明

入社前に、準備費用(出発旅費・住居手配費・研修費用など)や、母国側の送り出し機関・取次ぎ機関に対して費用支払いが発生する場合があります。それらの内容・金額を説明し、外国人材本人が納得しているかを確認することが求められます

支援費用を外国人に負担させない説明

受入れ機関は、支援に係る費用(住居手配・生活オリエンテーション・定期面談等)を外国人材側に負担させることはできません。事前ガイダンス時にこの点をしっかり説明し、理解を得ておく必要があります

入国時の送迎支援の説明

外国人が日本に到着後、空港または港から居住地や職場までの送迎支援が提供されることが多く、このようなサポートがある場合には事前ガイダンスで説明しておくべきです。

受入れ機関に、仕事上や日常生活等に関する相談や苦情の申し出ができることの説明

外国人材が勤務中・生活中に困ったことが生じた際に、受入れ機関または登録支援機関に相談・苦情を申し出ることができる体制があることを説明し、安心して相談できる環境だと伝えることが望まれます。

3. 任意的支援の事前ガイダンス

義務ではないものの、実施することで外国人材が日本での生活・仕事にスムーズに適応できるようになる「任意的支援」の説明項目を以下に紹介します。

日本の気候や季節にあった服装についての説明

日本は四季の変化が大きいため、特に母国が熱帯地域など気候の異なる地域の場合、どのような服装が適切かを事前に説明しておくと、入国後の違和感や困惑を軽減できます。

本国から持参可能な物と持参してはならない物の説明

日本への持ち込み禁止品や、逆に持参しておいた方が良い物(例えば日用品や変換プラグ等)、母国では当たり前でも日本では使えない・違法となる品などをあらかじめ説明することで、トラブル防止につながります。

当面の間、必要となる費用と金額についての説明

入国直後から給与支給までの期間、生活費・交通費・備品購入などで必要となる費用の概算を説明し、外国人材本人が安心して生活をスタートできるようにしておきましょう。

受入れ機関から支給される物についての説明

企業または登録支援機関から支給されるもの(作業着、工具、制服、生活備品等)がある場合、その内容・受け取り時期・管理方法などを事前に説明しておくと安心です。

4. 事前ガイダンスの注意点

この章では、事前ガイダンスを実施する際、特に気を付けるべきポイントを解説します。

特定技能外国人本人が、きちんと理解できる言語で説明を行う

事前ガイダンスは、特定技能外国人本人が内容をしっかり理解できることが大前提です。そのため、本人の言語能力に合わせた方法で実施することが求められます

もし日本語での説明を十分に理解できない場合は、必ず母国語での説明を行う必要があります。社内に該当言語に堪能なスタッフがいない場合は、通訳者を配置するか、登録支援機関などを通じて適切なサポート体制を整えることが重要です。

事前ガイダンスは3時間以上の実施が必要

上記と同様に、特定技能外国人が内容を正しく理解できるようにすることが重要なため、事前ガイダンスは3時間以上の実施が義務付けられています。時間を短縮して実施することは認められていません。

また、特定技能の在留資格認定証明書交付申請を行う際には、この事前ガイダンスが適切に実施されたかどうかについて、出入国在留管理庁による確認が行われます。そのため、形式的ではなく、理解度を確認しながら丁寧に実施することが求められます。

海外から入国する人材と、日本在住の人材では説明事項が異なる

日本へ新たに入国して就労を始める特定技能外国人と、すでに日本に在住し在留資格を「特定技能」に変更して働く外国人とでは、説明・確認すべき内容が異なります。

たとえば手続きに関しては、新規入国者には「在留資格の取得」に関する説明が必要ですが、国内在住者には「在留資格変更」の手続きを案内する必要があります。また、すでに日本で生活している場合は、住居に関するサポートが不要となるケースもあります。

このように、特定技能外国人それぞれの状況や背景に応じて、内容を調整したうえで適切な説明と支援を計画・実施することが重要です。

6. まとめ

受入れ企業・登録支援機関が実施すべき「事前ガイダンス」は、単なる事務的な手続きではなく、外国人材が日本で安心して働き・暮らし始めるための重要な第一歩です。義務的支援項目を漏れなく説明・確認し、任意的支援も活用すれば、定着率の向上・トラブル防止につながります。特に、言語・説明時間・実施方式には留意し、外国人本人が十分理解できていることを確認することが大切です。皆さまの企業においても、ぜひ本ガイドをもとにガイダンスプログラムを整備し、安心・適正な外国人雇用体制の構築を進めてください。

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