外国人技能実習制度とは?
外国人技能実習制度は、開発途上国の人材が日本の企業で働きながら、現場の技術・技能・知識を学び、帰国後にその経験を母国の経済発展に役立てることを目的とした国際貢献制度です。日本国内では1993年に制度化され、30年以上にわたり多数の企業が導入してきた実績があります。
一方、技能実習制度は単なる「労働力の受け入れ」ではなく、「人づくり」や「国際協力」といった視点が重要視されています。そのため、受け入れ企業には、技術指導や生活支援、適切な労働環境の整備など、一定の責任と役割が求められます。
制度の仕組みと受け入れの流れ
技能実習制度は、原則として「監理団体(組合)」を通じて実習生を受け入れる間接受け入れ方式と、企業が直接受け入れる直接受け入れ方式の2つの方法があります。ほとんどの中小企業では、監理団体を通じた受け入れが主流です。
【受け入れの流れ(例:間接受け入れの場合)】
1. 監理団体が海外の送り出し機関と連携し、候補者を選抜
2. 実習候補者は日本語やマナーの事前講習を受講
3. 企業との面接や書類選考を経て実習生が決定
4. 在留資格「技能実習」を取得し、来日
5. 配属後、企業でのOJT(実地研修)を開始
実習期間とステージ(技能実習1号~3号)
技能実習は最大で5年間の期間が設定されており、以下の3段階で構成されます。
区分 | 期間 | 在留資格 | 特徴 |
技能実習1号 | 1年目 | 技能実習(1号イ) | 基礎的な技能を習得。 常勤指導員の指導が必要 |
技能実習2号 | 2-3年目 | 技能実習(2号イ) | 基礎を踏まえ、実務レベルの技能へ。 試験に合格することが条件 |
技能実習3号 | 4-5年目 | 技能実習(3号イ) | 優良な企業・監理団体のみ対象。 高い技能・知識を習得 |
※ 技能実習3号に進むには、企業・監理団体が「優良認定」を受けている必要があります。
受け入れが可能な職種
外国人技能実習制度では、国が認定した職種・作業に限って外国人の受け入れが可能です。2025年4月現在、約90職種・160作業以上が対象となっており、主に以下の分野が含まれます。
外国人技能実習生を受け入れるメリット
- 人手不足の解消
慢性的な人材不足に悩む製造・建設・食品加工などの業種にとって、外国人技能実習生は大きな戦力になります。特に地方や中小企業では、即戦力として活躍できる人材の確保につながります。 - 現場の活性化と国際化
実習生は非常にまじめで勤勉な人が多く、日本人社員にも良い刺激を与えることが多いです。現場の雰囲気が活性化し、国際的な視点を取り入れる機会にもなります。 - 海外進出・取引への布石
実習生が帰国後、母国での自社製品の販路開拓や現地工場との連携の架け橋になるケースもあります。実習を通じた人脈形成が、将来のビジネス展開につながる可能性もあります。
受け入れ企業の義務と注意点
技能実習制度は「国際貢献」を目的とした制度であるため、単なる労働力として受け入れることは禁止されています。企業は、次のような義務を果たす必要があります。
・実習計画の作成・実施(事前に国の認定が必要)
・技能指導員と生活指導員の配置
・日本語や生活習慣のサポート
・適切な労働時間・賃金・安全管理
・定期的な監査や報告への対応
また、労働法令や人権に関する問題が発生した場合、実習の打ち切りや受け入れ停止処分となるリスクもありますので、健全な制度運用が求められます。
技能実習から特定技能への移行
2020年以降、技能実習を終えた外国人が、在留資格「特定技能1号」へ移行するケースが増加しています。特定技能制度は、より実務的な人材活用に適した制度で、在留期間の延長や職種の拡大も可能です。
技能実習で3年間働いた人材を、さらに長期的に雇用したい企業には、この移行が大きなメリットになります。
まとめ
外国人技能実習制度は、単なる人材確保の手段にとどまらず、「国際協力」と「企業成長」を両立できる制度です。適切に活用することで、企業の労働力不足の解消だけでなく、職場の国際化や将来的なビジネス展開の可能性も広がります。
受け入れには準備やサポート体制が必要ですが、信頼できる監理団体と連携し、制度趣旨を正しく理解して取り組めば、企業にとっても実習生にとっても有益な結果が得られる制度です。
我が国で培われた技能、技術又は知識の開発途上地域等への移転を図り、その地域の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的とした制度です。
◆技能実習法には…
基本理念として「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」
(法第3条第2項)と記されています。
技能実習生を労働力の需給の調整手段としての雇用や単純労働に従事させることは違法となりますので、ご留意ください。
◆技能実習制度の内容は…
外国人の技能実習生が、日本において企業や個人事業主等の実習実施者と雇用関係を結び、出身国において修得が困難な技能等の修得・習熟・熟達を図るものです。期間は最長5年とされ、技能等の修得は、技能実習計画に基づいて行われます。