外国人を雇用する企業は、「外国人雇用状況の届出」を必ず行う必要があります。
この届出は、不法就労を防ぎ、外国人労働者が適正に働ける環境を整えるための重要な義務です。
本記事では、届出の目的、対象となる外国人、提出方法、書類の書き方、注意点まで
企業が理解しておくべきポイントをわかりやすく解説します。
1. 外国人雇用状況の届出とは
外国人従業員を雇用する企業には、行政へ雇用状況を報告する義務の「外国人雇用状況の届出」があります。この制度は、外国人労働者の雇用の安定や改善、再就職支援を目的として2007年に導入されました。
事業主は外国人労働者の雇用や離職の状況、氏名や在留資格などの情報を正確に届け出る必要があります。
1-1. 報告が義務付けられる理由
外国人雇用状況の届出制度は、国が各事業所で働く外国人労働者の雇用状況を把握するために設けられています。この制度により、外国人労働者の雇用の安定や改善、さらには再就職支援などの施策を円滑に実施できるよう、国は事業主に対して届出義務を課しています。
また、日本で働く外国人が在留資格の範囲内で安全かつ適法に業務を行い、持てる能力を十分に発揮できる環境を整えるためには、事業主自身が制度の意義や目的を正しく理解し、法的な義務を確実に履行していくことが非常に重要です。
1-2. 届出対象となる外国人
届出の対象は、基本的にすべての外国人労働者です。ただし、以下のケースは提出不要です。
- 特別永住者
- 日本国籍を持たない外交官や公用の在留資格を持つ方
通常の「永住者」やその他の在留資格を持つ外国人は対象となり、正社員・アルバイトの区別なく報告する必要があります。
1-3. 雇用保険加入者・非加入者の扱い
雇用保険に加入する場合は、雇用保険被保険者資格取得届を提出すると、外国人雇用状況届出書を兼ねるため、別途の届出は不要です。逆に雇用保険に加入しない場合は、外国人雇用状況届出書(様式第3号)を提出します。
また、派遣アルバイトや派遣社員の場合は、雇用主である派遣元が届け出を行うため、受け入れ先の企業が対応する必要はありません。
1-4. 提出書類・期限のまとめ
| 区分 | 提出書類 | 届け出者 | 提出先 | 提出期限 |
|---|---|---|---|---|
| 雇用保険未加入(非被保険者) | 外国人雇用状況届出書(様式第3号) | 雇用主 | ハローワーク、外国人雇用状況届出システム(オンライン) | 雇入れ日の翌月末日まで |
| 雇用保険加入(被保険者) | 雇用保険被保険者資格取得届(様式第2号) | 雇用主 | ハローワーク、電子政府「e-Gov」(オンライン) | 雇入れ日の翌月10日まで |
このように、外国人労働者の雇用状況は在留資格や雇用形態によって提出方法や期限が異なります。正確な届出を行い、適正な雇用管理を進めることが企業の責務です。
2. 外国人雇用状況届出の提出方法
外国人労働者を雇用する際には、外国人雇用状況の届出を適切に提出することが義務付けられています。提出方法は大きく分けて2通りあり、オンラインでの提出と、事業所を管轄するハローワークへの窓口提出があります。それぞれの方法について、手順や注意点を詳しく確認しておきましょう。
2-1. ハローワークへの提出
外国人労働者を雇用する事業所や施設(店舗・工場など)の所在地を管轄するハローワークに、直接届出を行います。窓口提出は、初めて届出を行う場合や、オンライン利用に不慣れな場合に便利です。書類は所定の様式を使用し、必要な情報(氏名、在留資格、雇用形態など)を漏れなく記入することが重要です。
2-2. 外国人雇用状況届出システム(オンライン提出)
オンラインでの提出を希望する場合は、厚生労働省が提供する「外国人雇用状況届出システム」を利用します。
オンライン提出は、複数の届出を一度に行えるなど効率的なメリットがあります。ただし、利用するにはIDとパスワードが必要です。過去にハローワークの窓口を通じて一度でも届出を行った事業者は、新規登録ボタンからのID登録ができません。その場合は、以前届出を行ったハローワークに問い合わせることで、既存の情報を利用してオンライン提出に切り替えることが可能です。
2-3. 提出期限
外国人雇用状況の届出は、雇用した翌月末日までに提出する必要があります。ただし、雇用保険の被保険者資格取得届を兼ねて提出する場合は、雇入れ日の翌月10日までが提出期限です。期限を過ぎると、届出遅延として指摘を受ける可能性があるため、余裕を持って提出手続きを行うことが大切です。
3. 外国人雇用状況届出書の記載方法
外国人労働者を雇用した場合、事業主は外国人雇用状況届出書の記載方法を正しく理解し、適切に提出する必要があります。ここでは、雇用保険に加入する場合と加入しない場合での記載方法や注意点について詳しく解説します。
3-1. 雇用保険の被保険者の場合(雇用保険に加入する)
雇用保険に加入する外国人労働者の場合は、「雇用保険被保険者資格取得届(様式第2号)」の提出が外国人雇用状況届出の役割も兼ねます。したがって、この場合は別途、外国人雇用状況届出書を提出する必要はありません。
この届出書には、氏名や生年月日、在留資格、雇用形態、雇入れ日など基本情報に加え、雇用保険加入日や雇用契約期間など、労働者の雇用に関わる詳細情報を正確に記載することが求められます。提出期限は雇入れ日の翌月10日までです。

※出典:外国人雇用はルールを守って適正に|厚生労働省(pdf)
3-2. 雇用保険の被保険者ではない場合(雇用保険に加入しない)
外国人労働者が雇用保険に加入しない場合は、「外国人雇用状況届出書(様式第3号)」を提出します。この場合も、雇用者情報や外国人労働者の氏名、在留資格、国籍、雇用開始日などを正確に記入する必要があります。提出先は、管轄のハローワークまたは外国人雇用状況届出システム(オンライン)です。提出期限は雇入れ日の翌月末日までとなっています。

引用:外国人雇用はルールを守って適正に|厚生労働省(pdf)
派遣アルバイト・派遣社員の場合
派遣形態で雇用する場合は、実際の雇用主である派遣元事業者が届出を行うため、派遣先の企業が手続きを行う必要はありません。派遣元は、派遣社員や派遣アルバイトの氏名、在留資格、雇用期間など、必要情報を記載して管轄のハローワークに提出します。
届出書の提出内容をまとめると
| 項目 | 雇用保険に加入しない外国人 | 雇用保険に加入する外国人 |
|---|---|---|
| 様式 | 外国人雇用状況届出書(様式第3号) | 外国人雇用状況届出書(様式第3号) ※外国人は17〜23の欄も記載 |
| 届出を行う人 | 雇用主 | 雇用主 |
| 届出先 | ハローワーク、外国人雇用状況届出システム(オンライン) | ハローワーク、e-Gov(電子政府の総合窓口) |
| 提出期限 | 雇入れ日の翌月末日まで | 雇入れ日の翌月10日まで |
特別永住者や外交・公用の在留資格を持つ外国人、派遣形態のアルバイトや派遣社員は、提出対象外です。提出義務のある事業主は、必ず期限内に正確な情報を届け出るよう注意してください。
4. 届出手続きで注意すべきポイント
外国人雇用状況の届出は、単に提出すればよいというものではなく、適切に手続きを行うことが重要です。
ここでは、届出の際に注意すべきポイントを詳しく解説します。提出の不備や遅延は、事業主にとって法的なリスクや行政上の指導の対象となることがありますので、しっかり確認しておきましょう。
4-1. 届出を怠ると罰金の対象になる
外国人雇用状況の届出を提出しなかったり、虚偽の内容で提出した場合、事業主には30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
届出は法律で義務付けられており、期限内に正確な情報を提出することが求められます。特に、外国人の雇用開始日や在留資格、氏名などの基本情報の不備は、後々の監査や行政指導の原因となることがあるため注意してください。
4-2. 外国人が離職する時にも提出が必要
外国人労働者が離職した場合も、届出の提出義務があります。離職の情報をハローワークやオンラインシステムに報告することで、離職後の失業給付や再就職支援の対象となる場合があります。
| 離職者の雇用保険の加入状況 | 届出に必要な書類 | 提出先 | 提出期限 |
|---|---|---|---|
| 雇用保険に加入している場合 | 雇用保険被保険者資格喪失届(様式第7号) | ハローワーク(公共職業安定所)、e-Gov(オンライン) | 離職日の翌日から10日以内 |
| 雇用保険に加入していない場合 | 外国人雇用状況届出書(様式第3号) | ハローワーク(公共職業安定所)、外国人雇用状況届出システム(オンライン) | 離職日の翌月末日まで |
離職時の届出を正確に行うことで、外国人労働者の雇用管理や再就職支援が適切に実施され、事業主としても法的義務を果たすことができます。特に派遣社員やアルバイトなど雇用形態が多様な場合でも、漏れなく届出を行うことが重要です。
4-3. 提出の際の実務上のポイント
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外国人雇用状況届出の適正な提出は、事業主の法的義務であると同時に、外国人労働者が安心して働ける環境づくりにもつながります。期限や提出先、記載内容に注意し、正確かつ迅速に手続きを行うことが重要です。
5. 外国人雇用時に必要な本人確認と情報管理
外国人労働者を雇用する際には、本人確認や個人情報の適切な管理が非常に重要です。適切に管理しないと、法令違反や不正雇用のリスクが高まります。本章では、本人確認書類の確認方法や、情報の安全な管理方法について解説します。
5-1. 本人確認書類の提出と確認方法
外国人労働者を採用する際には、在留資格を証明する書類(在留カードや特別永住者証明書など)や身元確認書類(パスポートなど)の提出が必要です。
事業主は、書類に記載された氏名・生年月日・在留資格・在留期間が正確であるか確認し、コピーを取得して保管することが求められます。
これにより、適法な就労者であることを確認するとともに、不法就労の防止に寄与します。
5-2. 個人情報の適正な取り扱い
取得した外国人労働者の個人情報は、労働者の同意を得て、安全に管理する必要があります。情報の保存方法やアクセス権限を明確にし、不要になった情報は適切に廃棄することが大切です。
特に氏名や在留資格番号、パスポート番号などは漏洩すると法的リスクや個人への被害につながるため、十分な注意が求められます。
5-3. デジタルツールを活用した情報管理
紙の書類だけで管理するのではなく、クラウドサービスや社内データベースなどのデジタルツールを活用すると効率的です。
ただし、クラウド上で管理する場合は、アクセス権限の設定や暗号化など、情報漏洩を防ぐためのセキュリティ対策を必ず行う必要があります。
電子化することで、提出期限の管理や更新手続きの確認も容易になり、人的ミスの防止にもつながります。
まとめ:正確な届出で外国人の不法就労を防ごう
本記事では、外国人雇用状況の届出に関する手続き内容や注意点について解説しました。
外国人を雇用する企業は、「外国人雇用状況の届出」を確実に行うことが法律で義務づけられています。
届出は正確に、かつ期限内に行うことが非常に重要です。もしハローワークに直接足を運ぶ時間がない場合でも、インターネットを活用してオンラインで提出することができます。
届出書を記入する際、多くの場合は在留カードの情報を確認しながら進めることになるでしょう。このとき、在留資格の期限にも十分注意してください。
在留期限を過ぎて雇用してしまうと、不法就労を助長したと見なされる可能性があります。 それがたとえ意図的でない場合であっても、雇用主は法律上の責任を問われることがあります。
不法就労助長罪は、入管法第73条の2第1項により、3年以下の懲役または300万円以下の罰金に処される可能性がある重大な犯罪です。
外国人雇用状況の届出は、外国人労働者が不法就労に陥らないよう守るための大切な制度です。
事業主が届出義務をしっかり果たすことで、外国人労働者の適法な雇用だけでなく、企業自身の法的リスクも回避できることになります。正確かつ迅速な手続きの徹底が、外国人雇用における安心・安全な環境づくりにつながるのです。企業としての責任を果たし、適正な労務管理を徹底しましょう。
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