少子高齢化が進む日本において、若年層の労働力として外国人留学生のアルバイト採用を検討する企業が増えています。しかし、留学生を雇用する際、企業側は「日本人と同じように働かせてもいいのか?」「何か特別な手続きが必要なのか?」といった疑問を持つことが多いでしょう。
外国人留学生が日本でアルバイトをするためには、原則として、出入国在留管理庁から「資格外活動許可」を得る必要があります。この許可を得ずに働かせてしまうと、企業も留学生も法律違反に問われる可能性があります。
この記事では、外国人留学生の雇用を検討している採用担当者や企業経営者向けに、資格外活動許可の基本情報から、申請方法、そして雇用する企業側が知っておくべき厳守すべき労働時間の上限や手続き上の注意点までを、詳しく解説します。法令を遵守し、スムーズに留学生を採用するための参考にしてください。
1. 資格外活動許可とは?留学生採用の基本
外国人留学生を雇用するにあたり、まず理解しておくべき「資格外活動許可」の基本情報について解説します。
1-1. 資格外活動許可の定義と必要性
資格外活動許可とは、外国人が現在持っている在留資格(例:「留学」)では認められていない収益を伴う活動(アルバイトなどの就労活動)を特別に行うために、出入国在留管理庁から受ける許可のことです。
外国人留学生が持つ在留資格「留学」は、本来、学校などで教育を受けることを目的としたものです。そのため、この資格で就労活動を行うことは原則として認められていません。留学生が学費や生活費を補うためにアルバイトを行う場合、この資格外活動許可が必須となります。
許可を得ていない留学生を雇用したり、許可の範囲を超えて働かせたりすると、企業側は不法就労助長罪に問われる可能性があり、社会的信用を失うだけでなく、罰則(3年以下の懲役または300万円以下の罰金)が科されることになります。
1-2. 資格外活動許可の対象となる外国人
資格外活動許可の対象となる外国人の在留資格は「留学」の他に、「家族滞在」など、限られた在留資格を持つ外国人が、現在の活動を妨げない範囲で収益活動を行うために申請できます。
特に留学生の場合、資格外活動許可が下りるためには、以下の条件を満たしている必要があります。
【資格外活動許可の主な条件(留学生)】
- 在籍する学校が、大学・短期大学・高等専門学校・高等学校・中学校、または専修学校・各種学校などであること。
- 学業に支障がないと認められること。
- 就労する活動が、風俗営業または風俗関連営業など禁止されている業種ではないこと。
- 定められた労働時間の上限を超えない範囲での活動であること。
企業側は、採用決定前に必ず留学生の在留資格と、資格外活動許可の有無を確認する義務があります。
2. 留学生の資格外活動許可で企業が守るべきルール
資格外活動許可を得た留学生を雇用する場合、企業は日本人従業員とは異なる厳格な労働時間の上限を守らなければなりません。これは留学生の学業を保護するためであり、違反は重大な法令違反となります。
2-1. 留学生の労働時間の上限(原則)
外国人留学生が資格外活動としてアルバイトできる労働時間は、原則として週に28時間以内と定められています。
この「週28時間」という上限は、複数の職場で働いている場合も合算されます。たとえば、A社で15時間、B社で13時間働いた場合、合計28時間となり、これ以上働くことはできません。企業側は、自社での労働時間だけでなく、他の職場での労働時間も確認し、留学生が法令を遵守できるよう配慮する義務があります。
2-2. 労働時間の上限の例外(長期休業期間)
大学などが定めている長期休業期間(夏休み、冬休み、春休みなど)においては、例外的に労働時間の上限が緩和されます。
【長期休業期間中の労働時間】
- 1日あたり8時間以内
- 1週間あたり40時間以内
ただし、この緩和措置が適用されるのは、留学生が在籍する学校が長期休業期間と定めた期間のみです。企業側は、学生証や学校発行の書類などで休業期間を正確に把握し、その期間のみ労働時間を増やすようにしましょう。
2-3. 雇用が認められない業種(風俗営業等)
資格外活動許可を得た留学生であっても、以下の活動や業種での就労は一切認められていません。
【外国人留学生の就労が禁止されている主な業種】
- 風俗営業:バー、キャバレー、スナックなど、接待を伴う飲食店
- 遊興施設:パチンコ店、麻雀店、ゲームセンターなど
- 性風俗特殊営業:アダルト関連の店舗やサービス
たとえ店舗の清掃や皿洗いなど、客の接待を伴わない裏方業務であっても、店舗全体が風俗営業の許可を得ている場合は就労が禁止されます。企業側は、自社の事業内容がこれらの禁止業種に該当しないか、事前に確認することが必須です。
3. 資格外活動許可の申請方法と確認ポイント
資格外活動許可は留学生本人が申請するものですが、企業側も手続きの流れと確認すべきポイントを知っておくことで、採用プロセスをスムーズに進めることができます。
3-1. 許可申請のタイミングと方法
留学生が資格外活動許可を申請するタイミングは、主に以下の2通りです。
【資格外活動許可の主な申請タイミング】
- 上陸時:留学生として日本に入国する際、空港などの上陸審査時に同時に申請する。
- 入国後:すでに日本に在留している場合、住所地を管轄する出入国在留管理庁(入管)へ申請する。
許可申請に必要な主な書類は、申請書や在留カード、パスポート、学生証などです。
3-2. 資格外活動許可証(在留カード裏面)の確認方法
留学生を採用する企業は、内定を出したり、雇用を始める前に、必ず本人の在留カードを提示してもらい、裏面を確認しなければなりません。
資格外活動許可が下りている場合、在留カードの裏面の「資格外活動許可欄」に以下のように記載されています。
【資格外活動許可の記載内容】
- 「原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く」

この記載がない場合は、まだ許可が下りていないことを意味します。この状態で雇用を開始すると、企業側が不法就労助長罪に問われます。必ず許可の有無を確認し、書類のコピーを保管しておきましょう。
4. 企業が留学生を雇用する際の罰則と注意点
外国人留学生の雇用は人手不足の解消に貢献しますが、法令を軽視すると企業が大きなリスクを負うことになります。特に重要な罰則と注意点を理解しておきましょう。
4-1. 不法就労助長罪による罰則
留学生が資格外活動許可を得ずに就労した場合や、許可された労働時間を超えて就労させた場合、企業側は不法就労助長罪に問われます。
この罪に問われると、企業や雇用主には「3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方」という非常に重い罰則が科されます。企業としての社会的信用を失うだけでなく、今後の外国人材の採用にも大きな悪影響を及ぼします。
4-2. 雇用時の注意点:労働時間の厳格な管理
留学生の労働時間は、「週28時間以内」という上限を絶対に超えないよう、厳格に管理する必要があります。
労働時間がオーバーするケースの多くは、留学生が他のアルバイト先で働いていることを企業側が把握していないために起こります。
【労働時間厳格管理のための措置】
- 採用時に「他のアルバイト先や予定の労働時間」を正確に申告させる。
- 雇用契約書に「週28時間を超過した場合は契約解除の対象となる」旨を明記する。
- 勤怠管理システムやタイムカードで、1分単位で労働時間を記録し、週ごとにチェックする体制を整える。
企業側が故意でなくても、結果的に労働時間を超過させていた場合、罰則の対象となるリスクがあります。
4-3. 雇用時の注意点:雇用契約内容の明確化
留学生を含む外国人労働者を雇用する場合、労働基準法に基づき、雇用契約の内容を明確に記載した書面を交付する義務があります。
特に重要なのは、日本語を完全に理解していない可能性を考慮し、契約内容を母国語で併記するなど、本人が正しく理解できるように配慮することです。これにより、労働条件に関する誤解やトラブルを未然に防ぐことができます。
5. まとめ
外国人留学生の雇用は、人手不足解消と国際的な職場環境の実現に貢献する大きなメリットがあります。
しかし、彼らがアルバイトをするためには「資格外活動許可」が必須であり、企業側には「週28時間以内」という厳格な労働時間の上限を守る義務があります。
採用担当者は、雇用前に必ず在留カードの裏面を確認し、雇用開始後も勤怠管理を徹底しなければなりません。法令を遵守し、留学生の学業を妨げないよう配慮することで、企業も留学生も安心して働ける、健全な雇用関係を築くことができるでしょう。
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