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【徹底解説】在留資格「高度専門職」とは?ポイント制度の仕組み、優遇措置、計算方法、企業側のメリットまで網羅

近年、日本の産業にイノベーションをもたらし、国際競争力を高める鍵として、高い専門知識や技術を持つ外国人材、すなわち「高度人材」の受け入れが注目されています。彼らの活動を促進するために設けられたのが、「高度人材ポイント制度」と在留資格「高度専門職」です。

本記事は、企業の人事担当者様や、日本での活躍を目指す外国人材ご本人に向けて、「高度専門職」ビザの具体的な仕組みを網羅的に解説します。
ポイント制度の概要から、取得者が得られる強力な優遇措置、気になるポイントの計算方法、そして在留資格を申請する具体的な流れまでを徹底的に掘り下げます。この制度を正しく理解し、優秀な高度人材の採用や、自身のキャリア形成にぜひお役立てください。

1. 在留資格「高度専門職」と高度人材ポイント制度の基礎知識

高度人材外国人とは?その定義と位置づけ

高度人材外国人とは、日本の産業にイノベーションをもたらし、国際的な競争力を高めるために必要とされる、高度な専門知識や技術、経営能力を有する外国人材を指します。
具体的には、出入国在留管理庁が定めた「高度人材ポイント制度」に基づき、一定の基準(70点以上)を満たし、在留資格「高度専門職」の認定を受けた人々です。
この在留資格が創設される以前は、該当する外国人は「特定活動」という在留資格で活動していましたが、優秀な人材に明確な優遇措置を提供し、受け入れを促進する目的で、2015年にこの新しい在留資格が導入されました。

高度人材ポイント制度とは何か?その目的と仕組み

高度人材ポイント制度とは、外国人材が持つ「学歴」「職歴(実務経験)」「年収」「年齢」、そして「研究実績」や「日本語能力」といった項目ごとにポイントを設定し、その合計点数が70点以上に達した場合に「高度人材」として認定する仕組みです。
この制度は、客観的かつ定量的な指標を用いることで、優秀な外国人材を迅速かつ確実に受け入れることを目的に設計されています。活動内容は、以下の3つの類型に分類され、それぞれの特性に合わせた評価基準が適用されます。

    • 高度学術研究活動
    • 高度専門・技術活動
    • 高度・経営・管理活動

この点数が70点を超えると、申請者は高度専門職の在留資格を得る資格が与えられ、手厚い優遇措置の対象となります。

参考:ポイント評価の仕組み(出入国在留管理局)

高度専門職の創設目的と日本社会における役割

在留資格「高度専門職」が創設された最大の目的は、日本が優秀な外国人材を積極的に受け入れ、長期的に活躍してほしいという国家的な姿勢を明確に示すことにあります。
高度人材は、少子高齢化が進む日本において、産業界にイノベーション(技術革新)をもたらし、停滞しがちな労働市場に新しい知見と活力を注入する重要な役割を担っています。この制度を通じて、出入国管理上のさまざまな優遇措置を提供することで、彼らが安心して日本で生活し、日本人労働者と協調・競争しながら、専門的かつ技術的な分野での日本の発展に貢献することが強く期待されています。

在留資格「高度専門職」の分類(1号イ・ロ・ハ)

高度専門職の在留資格は、外国人の活動内容に応じて、まず「高度専門職1号」として以下の3種類に細かく分類されています。これは、それぞれの専門分野の特性に応じた適切な評価を行うためです。

  • 高度専門職1号(イ):高度学術研究活動
    日本の公私の機関との契約に基づき、研究、研究の指導、または教育を行う活動が該当します。具体的には、大学の教授や研究者などがこの類型に含まれます。
  • 高度専門職1号(ロ):高度専門・技術活動
    自然科学または人文科学の分野に属する高度な知識や技術が必要とされる業務に従事する活動です。
    ITエンジニア、コンサルタント、高度な技術を持つ専門家など、最も多くの外国人材が該当する類型です。
  • 高度専門職1号(ハ):高度経営・管理活動
    日本の公私の機関において、事業の経営または管理を行う活動です。企業の経営者、役員、管理職などが該当し、この類型では特に年収の要件が厳しく設定されています(最低年収300万円以上)。

高度専門職2号への移行条件とメリット

在留資格「高度専門職2号」は、1号で一定期間活動を行った外国人材が、さらに日本に定着して活動できるように設けられた、極めて優遇度の高い在留資格です。
この資格を取得するためには、原則として高度専門職1号の在留資格をもって3年以上継続して日本で活動していたことが主な要件となります(※)。
2号へ移行すると、在留期間が無期限となり、在留資格更新の手続きが不要になります。さらに、1号で認められていた活動範囲に加え、就労に関するほぼ全ての在留資格で認められる活動を行うことができるようになり、活動の自由度が格段に向上します。

(※)2023年4月以降に新設された「特別高度人材(J-Skip)」の認定を受けた場合は、1号として1年間の在留で2号への変更申請が可能となり、より早期に優遇措置を享受できるようになりました。

2. 高度専門職外国人が享受できる優遇措置と企業側のメリット

高度専門職の採用が企業にもたらす具体的なメリット

高度専門職の在留資格を持つ外国人材を採用することは、企業側にも多大なメリットをもたらします。
まず、高度人材ポイント制度をクリアしている時点で、その外国人材が「高い専門性、技術、実績」を持っていることが公的に証明されているため、採用前のスクリーニングや面接時の評価が容易になります。
さらに、入国・在留手続きが優先的に処理されるため、通常数ヶ月かかる入国までの期間が大幅に短縮され(入国審査は概ね10日、在留審査は概ね5日を目途)、事業計画の遅延リスクを軽減できます。
また、複合的な在留活動が許容されるため、採用後に本人の適性に合わせて職種を超えた配置転換や社内異動を柔軟に行える点も大きな魅力です。在留期間も最長の「5年」が付与されるため、長期的な視点に立った事業への貢献を期待できます。

永住許可要件の大幅な緩和(80点以上の取得者)

高度専門職の在留資格を取得する外国人にとって、最大のインセンティブの一つが永住許可要件の大幅な緩和です。原則として、永住権(在留資格「永住者」)の取得には日本に10年間継続して在留していることが必要ですが、高度専門職の認定を受けると、この期間が大幅に短縮されます。

  • 80点以上のポイントを有する場合は、高度専門職として継続して1年間活動しただけで、永住許可の申請が可能になります。
  • 70点以上80点未満のポイントを有する場合は、高度専門職として継続して3年間活動した後に永住許可の申請が可能になります。

企業側にとっても、活動制限のない永住権を取得した人材は、長期的な活躍が見込めるため、雇用継続の大きなメリットとなります。

親の帯同許可を含むその他の強力な優遇措置

高度専門職は、永住要件の緩和以外にも、外国人材が日本での生活基盤を安定させ、本業に集中できるよう、非常に手厚い優遇措置が提供されます。

  • 在留期間「5年」の一律付与: 他の就労系在留資格では1年や3年が付与されることが多い中、最長の5年が一律に付与され、更新手続きの負担が軽減されます。
  • 親の帯同の許可: 一定の条件下(世帯年収800万円以上、7歳未満の子の養育や妊娠中の配偶者・本人の介助を行う場合など)で、高度専門職本人または配偶者の親の帯同が認められます。これは、異国での子育てや家族の介護において、精神的・実務的な安心感をもたらす大きな特典です。
  • 家事使用人の帯同の許可: 一定の条件(世帯年収や必要性)を満たせば、**外国人家事使用人**を帯同することが可能です。
  • 配偶者の就労が容易に: 配偶者は、学歴や職歴などの要件を満たさなくても、特定の在留資格(教育、技術・人文知識・国際業務など)に該当する活動に従事することが認められ、**世帯収入の向上**に貢献できます。
  • 複合的な在留活動の許容: 複数の在留資格にまたがる活動を同時に行うことができます(例:大学での研究活動と関連事業の経営)。
  • 入国・在留手続の優先処理: 大幅な審査期間の短縮が実現され、迅速な入国・就労開始が可能となります。

3. 高度専門職のポイント計算方法と点数を高める特別加算項目

ポイント制度の計算は、高度専門職1号の3つの活動類型(イ・ロ・ハ)に応じて細かく規定されていますが、基本的には「学歴」「職歴(実務経験)」「年収」「年齢」の4つが主要な構成要素となります。

例えば、最も一般的な「高度専門・技術活動(ロ)」の場合、博士号取得者は30点、実務経験10年以上は20点、年収1,000万円以上は40点といった形で、点数が加算されていきます。年齢も若年であるほど点数が高くなる傾向にあります。

これらに加えて、「特別加算措置(ボーナスポイント)」があり、点数をさらに高めることが可能です。
具体的な特別加算の例としては、以下の項目が挙げられます。

  • 日本の大学院を卒業していること。
  • 日本語能力試験(JLPT)N1合格またはBJTビジネス日本語能力テストで一定以上の点数を取得していること(最大15点)。
  • 従事する業務に関連する、日本での特許や資格を保有していること。
  • 国が定める特定の研究実績があること。
  • 勤務先の企業が、イノベーション促進支援を受けている企業や中小企業であること。

申請においては、自己申告ではなく、全ての点数項目についてそれを裏付ける客観的な資料の提出が求められます。
正確なポイント計算は、出入国在留管理庁のホームページからダウンロードできるポイント計算表(Excelシート)を利用するのが最も確実です。

出典:出入国在留管理局 法務省

4. 高度専門職の在留資格を申請するための手続きの流れ

高度専門職の在留資格を申請する手続きは、申請者の現在の状況によって「新規入国」「在留資格変更」「在留期間更新」の3つのパターンに分かれます。

これから日本に入国を予定している場合の申請手続き

在留資格認定証明書交付申請(COE申請)を行います。

企業が外国人材を雇用するにあたり、まず日本での活動内容が高度専門職の基準に適合していること、そしてポイント計算が70点以上であることを証明し、出入国在留管理庁へ申請します。
審査を経て証明書が交付された後、外国人材はその証明書を本国の日本大使館・領事館に提示し、ビザ(査証)の発給を受けます。この流れを経ることで、日本へのスムーズな入国が可能となり、入国時に「高度専門職1号」の在留資格が付与されます。

すでに日本に在留している外国人の場合の申請手続き

在留資格変更許可申請を行います。

すでに「技術・人文知識・国際業務」など他の就労系在留資格で日本に滞在している外国人材が、高度人材ポイントが70点以上を満たした場合は、この申請を行います。
申請者は、現在の在留資格から「高度専門職1号」への変更を求め、審査を受けます。この手続きにより、日本国内で在留資格を切り替えることができ、引き続き日本で活動を継続しながら優遇措置の対象となります。

高度専門職の在留期間更新の申請について

在留期間更新許可申請を行います。

高度専門職1号(在留期間5年)の在留期限が近づいた場合、引き続き高度人材としての活動を行う意思があることを示し、更新申請を行います。
この際、ポイントが引き続き70点以上であるか、また、税金や公的年金・保険料の納付状況など、日本での素行や義務の履行状況が厳しく審査されます。高度専門職2号への移行条件(3年以上活動)を満たしている場合は、同時に2号への変更申請も可能です。

申請時に必要となる主要な書類一覧

申請の種類によって必要書類は異なりますが、共通して重要となる主要な書類は以下の通りです。

  • 在留資格認定証明書交付申請書または在留資格変更/更新許可申請書
  • 高度人材ポイント計算表および、それを立証する学歴、職歴、年収、資格に関する証明書類(卒業証明書、在職証明書、源泉徴収票など)
  • 雇用契約書、労働条件通知書(活動内容や報酬に関する書類)
  • 所属機関の概要を示す資料(登記事項証明書、事業内容を明らかにする資料など)

特にポイント計算を裏付ける資料は多岐にわたるため、提出漏れや記載内容の不一致がないよう、十分な確認が必要です。

5. まとめ

在留資格「高度専門職」は、日本が国際競争力を維持・強化するために、高い専門性を持つ外国人材を優遇し、定着を促すための中核的な制度です。
ポイント制度による客観的な評価、永住許可要件の緩和、親の帯同許可など、他の在留資格とは一線を画す強力なインセンティブが提供されています。
外国人材ご本人にとっては、日本での長期的なキャリア形成と家族との生活基盤の確立に直結する重要な資格であり、企業側にとっては、優秀な人材を迅速かつ安定的に確保し、事業の成長を加速させるための戦略的な採用ツールとなります。
この制度を最大限に活用し、日本と外国人材双方にとってメリットのある関係を築き上げることが期待されます。

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