少子高齢化が急速に進む現代の日本において、外国人労働者の存在感は、社会全体やビジネスの現場でますます重要なものとなっています。多くの企業が人手不足解消のために外国人材の採用を検討する中で、「今、日本に最も多く住んでいる外国人はどの国籍の人か?」「どの地域に集まっているのか?」「どのような在留資格で働いているのか?」といった最新の動向を把握することは、採用戦略を立てる上で欠かせません。
この記事では、法務省や厚生労働省が公表した最新の公的データに基づき、日本で暮らす外国人や外国人労働者に関するさまざまな「ランキングTOP10」を詳しくご紹介します。さらに記事の後半では、増加が著しい外国人材を迎え入れ、採用を成功させるための具体的なステップと、必ず押さえておくべき重要な注意点についても徹底的に解説します。外国人採用を検討されている方は、ぜひ最後までご覧ください。
1. 日本に在住する外国人(在留外国人)の国籍別最新動向
近年、日本の人手不足を背景に、日本で暮らす外国人の数は増加傾向にあり、その総数は過去最高を更新し続けています。ここでは、どの国出身の外国人が多いのかを、出入国在留管理庁が公表した令和6年末時点のデータを基に、ランキング形式でご紹介します。
<日本で暮らす外国人 国別ランキング TOP10(令和6年末時点)>
- 1位:中国 873,286人
- 2位:ベトナム 634,361人
- 3位:韓国 409,238人
- 4位:フィリピン 341,518人
- 5位:ネパール 233,043人
- 6位:ブラジル 211,907人
- 7位:インドネシア 199,824人
- 8位:ミャンマー 134,574人
- 9位:台湾 70,147人
- 10位:アメリカ 66,111人
出典:令和6年末現在における在留外国人数について | 出入国在留管理庁
1-1. 最も多いのは「中国」だが、東南アジア諸国の伸びが顕著

出典:国籍・地域別 在留外国人の構成比 | 出入国在留管理庁
日本で暮らす在留外国人のうち、最も多い国籍は長年にわたり中国であり続けています。その背景には、中国国内の超学歴社会化があり、ますます激化する大学受験競争を回避し、将来の国際的なキャリアを見据えて日本への留学を選択する若者が増加していることが理由の一つと考えられます。彼らは留学後、日本国内での就職を目指すケースが多く見られます。
一方、このランキングの注目すべきポイントは、トップ10の半数近くを東南アジアの国々が占めている点です。特に2位のベトナムをはじめ、インドネシア、ネパール、フィリピン、ミャンマーといった東南アジア出身者が占める割合は年々増加傾向にあり、その存在感は非常に高まっています。主な要因として、日本への就労目的で来日する外国人、特に特定技能や技能実習といった在留資格で働く人々が増加していることが挙げられます。
ベトナムやフィリピンなど一部の国では、近年、日本との賃金格差が縮小しつつあるというデータもありますが、その他のインドネシア、ネパール、ミャンマーといった国々と比較すると、まだまだ日本国内で働いた方が高い賃金を得やすいという経済的な背景があります。このため、「日本でキャリアを築き、効率的にお金を稼ぎたい」と考える優秀な外国人労働者の受け入れは、東南アジア地域を中心に今後もさらに拡大することが予想されています。外国人採用を考える企業にとって、これらの国の文化や国民性を理解しておくことは必須です。
2. 在留外国人が多数居住する都道府県別ランキング
次に、在留外国人がどの地域に集中して暮らしているのかを、都道府県別のランキングで見ていきましょう。
この分布は、外国人材の採用活動を行う上で、ターゲットとする地域を特定する際の重要な手がかりとなります。
<日本で暮らす外国人が多い都道府県ランキング TOP10(令和6年末時点)>
- 1位:東京都 738,946人
- 2位:大阪府 333,564人
- 3位:愛知県 331,733人
- 4位:神奈川県 292,450人
- 5位:埼玉県 262,382人
- 6位:千葉県 231,614人
- 7位:兵庫県 142,676人
- 8位:静岡県 124,281人
- 9位:福岡県 113,159人
- 10位:茨城県 102,549人
出典:令和6年末現在における在留外国人数について | 出入国在留管理庁
2-1. 居住者数が最も集中しているのは「東京都」とその背景
外国人居住者が最も多い都道府県は、圧倒的な差で東京都という結果でした。居住者数は73万人を超えており、これは2位の大阪府を大きく上回っています。東京に外国人が集中する背景には、主に以下の5つの理由が考えられます。
【東京で暮らす外国人が多い主な理由】
- 理由①:外国人向けの求人数が極めて多い:多様な企業や産業が集積する東京では、専門スキルを持つ外国人材から、特定技能などで活躍する一般労働者まで、幅広い層に向けた求人が他の地域と比べて圧倒的に多く存在します。これは、キャリアアップを目指す外国人にとって最大の魅力です。
- 理由②:外国人コミュニティの存在が強い:新大久保(コリアンタウン)や西葛西(インド人コミュニティ)など、特定の国や地域のコミュニティが形成されており、心理的な安心感や生活のしやすさが得られます。地方で働いていた外国人が、人間関係や情報入手のしやすさを求めて東京圏に転居するケースも多く見られます。
- 理由③:最低賃金・平均賃金が高い:東京は日本で最も最低賃金が高く設定されているため、結果として平均賃金も他のエリアより高くなります。「日本で効率的に資金を貯めたい」という動機を持つ外国人労働者にとって、経済的な魅力は非常に大きいです。
- 理由④:日本語学校や専門学校、大学が集中している:日本で学ぶために来日する留学生の受け入れ先となる教育機関が東京に集中しています。彼らは卒業後に日本での就職を目指すため、そのまま東京圏に定住するケースが多くなります。
- 理由⑤:大企業や高度な産業が集積している:東京には大企業の数多く本社機能が集中しています。結果として、高い専門性を持つ高度人材(技術・人文知識・国際業務などの在留資格を持つ外国人)の採用ニーズが高く、彼らが集まりやすい環境が整っています。
地方での外国人採用を検討する場合、これらの大都市圏への集中傾向を踏まえ、地域独自の魅力や生活環境の整備がより重要になると言えます。
3. 増加傾向にある「就労ビザ」を含む在留資格別の状況
外国人が日本に滞在するために必要な「在留資格」(一般的に就労ビザと呼ばれるものを含む)は、日本での活動内容や期間を法的に定めるものです。ここでは、在留資格別に見た在留外国人のランキングを確認し、就労目的で滞在する外国人の動向を分析します。
<日本で暮らす外国人の在留資格ランキング TOP10(令和6年末時点)>
- 1位:永住者 918,116人
- 2位:技能実習 456,595人
- 3位:技術・人文知識・国際業務 418,706人
- 4位:留学 402,134人
- 5位:家族滞在 305,598人
- 6位:特定技能 284,466人
- 7位:特別永住者 274,023人
- 8位:定住者 223,411人
- 9位:日本人の配偶者等 150,896人
- 10位:特定活動 95,508人
出典:令和6年末現在における在留外国人数について | 出入国在留管理庁
3-1. 「永住者」が最多も、「特定技能」などの就労系在留資格が特に増加
在留資格で最も多かったのは「永住者」でした。永住者は、長期間日本に滞在し生活基盤を築いた外国人が申請できる資格であり、在留期間や職種に制限がない点が最大の特徴です。この順位からも、日本に長期的に定着して生活する外国人が多いことが分かります。
しかし、このランキングで最も注目すべきは、就労を主な目的とした在留資格を持つ外国人の増加ペースです。令和6年末時点で、就労可能な在留資格(技能実習、特定技能、技術・人文知識・国際業務など)を持つ外国人は、前年比約18.9%増の約116万人に達しています。これは、日本社会の労働力としての外国人材への依存度が高まっていることを示しています。
特に「特定技能」は、在留者数ランキングでは6位ながら、前年から約36.5%増という圧倒的な伸び率を記録し、増加率においては他の就労資格を上回っています。これは、従来の「技能実習」制度ではカバーしきれなかった、深刻な人手不足分野(介護、飲食料品製造、建設など)で、即戦力となる外国人労働者の受け入れが積極的に進められている結果です。今後、「技能実習」が廃止され、「育成就労」制度へ移行するに伴い、特定技能の重要性と在留者数はさらに増加していくと予測されます。
4. 外国人労働者の国籍別増加率の比較と背景
次に、日本の企業で実際に働いている外国人労働者に焦点を当て、その増加率を国籍別に比較します。全体の人数だけでなく、増加率を見ることで、今後、どの国からの外国人材の採用が主流になっていくのかという未来のトレンドを予測できます。
<外国人労働者の増加率ランキング(国別):令和6年10月末時点>
- 1位:ミャンマー 61.0%
- 2位:インドネシア 39.5%
- 3位:スリランカ 33.7%
- 4位:ネパール 28.9%
- 5位:ベトナム 10.1%
- 6位:タイ 8.9%
- 7位:フィリピン 8.3%
- 8位:韓国 5.0%
- 9位:中国(香港、マカオを含む) 2.7%
- 10位:G7など 0.3%
出典:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和6年10月末時点)|厚生労働省
4-1. 外国人労働者の増加率トップは「ミャンマー」
国籍別の外国人労働者の増加率において、近年、最も急速に伸びているのが「ミャンマー」出身者です。その増加率は61.0%と、他の国々を圧倒しています。この急増の背景には、ミャンマー国内の情勢が大きく影響しています。
内戦による政情の悪化や、軍事政権による徴兵制の実施など、不安定な社会情勢を逃れ、安定した環境と高い賃金を求めて日本で働くことを選択する人々が増加しています。また、経済状況の悪化によりミャンマー国内で安定した働き口を見つけることが難しくなった人々が、雇用が安定し、賃金水準も高い日本を魅力的な就労先として選ぶ流れが生じています。
しかしながら、現在、ミャンマー政府が出国を制限する措置を取っているため、今後も同じように高い増加率を維持できるかは不透明な状況です。もしこの出国制限が長期化・強化された場合、現在2位であるインドネシアなど、他の東南アジア諸国がミャンマーを上回って増加の主役に躍り出る可能性も考慮しておく必要があります。企業は、特定の国に偏ることなく、多角的な外国人採用ルートを確保することが重要です。
5. 外国人労働者をスムーズに採用するための具体的な手法
ここまで、日本に在住する外国人材の最新動向とランキングを見てきました。これらのデータが示すように、外国人労働力は企業経営において不可欠な存在となりつつあります。ここでは、外国人採用を成功させ、スムーズに人材を確保するための具体的な方法と、採用時に留意すべき重要なポイントを解説します。
5-1. 外国人材採用を成功に導く6つのステップ
外国人労働者の採用プロセスは、日本人を対象とした採用とは異なり、ビザ(在留資格)の確認や手続き、そして生活面でのサポートなど、独自の配慮が必要となります。成功のために踏むべき6つのステップを理解しておきましょう。
【外国人材採用を成功に導く6つのステップ】
- ステップ①:採用計画の策定:採用の目的、必要なスキル(日本語レベル、専門知識)、受け入れる在留資格(特定技能、技術・人文知識・国際業務など)、そして採用人数を明確にします。
- ステップ②:採用ルートの選択:国内の求人サイト、SNS、人材紹介会社、海外のエージェント、または登録支援機関(特定技能の場合)など、最適な募集チャネルを選定します。
- ステップ③:募集・選考活動の実施:海外在住者を採用する場合はオンライン面接(Web面接)を活用するなど、応募者の状況に合わせた柔軟な選考体制を整えます。
- ステップ④:内定・雇用契約の締結:雇用条件や賃金について、日本人と同等以上の待遇を提示し、誤解が生じないよう母国語も併記した契約書で丁寧に説明します。
- ステップ⑤:在留資格の申請:入社予定の外国人材が持つ在留資格や、これから取得・変更する在留資格について、必要な書類を作成し、出入国在留管理庁へ申請手続きを行います。これは内定後の最も重要なステップの一つです。
- ステップ⑥:入国・受け入れ準備:入社前の住居手配、入国後の空港出迎え、自治体への届出、そして社内での文化や生活習慣に関する研修など、スムーズな日本での生活開始をサポートします。
これらのステップを確実に行うことで、法令を遵守しつつ、優秀な外国人材を迎え入れる基盤が整います。
5-2. 外国人材を採用する際に留意すべき3つのポイント
外国人採用のプロセスにおいては、特に注意が必要な法務的・文化的な側面があります。以下の3つのポイントを必ず留意してください。
【外国人材を採用する際の3つの注意点】
- 注意点①:在留資格と活動範囲の厳守:外国人材は、その在留資格で認められた活動範囲内でのみ就労が可能です。「技術・人文知識・国際業務」の外国人に単純作業を任せるなど、資格外の活動をさせた場合、企業側も不法就労助長罪に問われる可能性があるため、業務内容と在留資格の一致を常に確認する必要があります。
- 注意点②:日本人と同等以上の賃金設定:外国人労働者に対して、国籍や在留資格を理由に、日本人従業員よりも低い賃金を設定することは、労働基準法違反や不当な差別にあたります。必ず日本人と同等以上の賃金や待遇を保証し、公正な労働環境を提供してください。
- 注意点③:採用後の生活・文化的なサポート:採用は入社がゴールではありません。日本の生活習慣、地域のルール、ゴミの分別方法など、外国人にとっては分からないことが多々あります。入社後の定期的な面談や相談窓口の設置、文化的な違いを理解する社内研修など、定着に向けた手厚いフォローアップ体制が外国人採用成功の鍵となります。
6. 外国人採用の成功はプロへの相談が近道
外国人労働者の増加傾向は今後も続き、特定技能をはじめとする外国人材の活用は、企業経営における重要な戦略の一つとなります。しかし、在留資格の手続きや、国ごとの文化や習慣の理解、増加傾向にあるミャンマーやインドネシアなどの最新動向を踏まえた採用戦略の策定には、専門的な知識が不可欠です。
「自社に合った在留資格が分からない」「初めての外国人採用で何から手をつけるべきか」といった疑問や不安をお持ちの採用担当者様は、外国人採用の専門家である人材紹介サービスや登録支援機関に相談することをおすすめします。プロのサポートを受けることで、法令遵守を徹底しながら、優秀な外国人材をスムーズに確保し、企業の成長に繋げることが可能となります。
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