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特定技能2号 外食業分野についてわかりやすく解説!

日本の外食業界は、慢性的な人手不足に直面しており、特に調理や接客、店舗運営における安定した労働力の確保が急務となっています。こうした背景の中、2023年8月から、これまで対象外だった「外食業分野」での特定技能2号の受け入れが可能となりました。

これにより、一定の経験やスキルを持つ外国人がより長期的かつ安定的に就労できる道が開かれたのです。本記事では、外食業における特定技能2号の最新制度について、初めての方にもわかりやすく詳しく解説します。

1. 特定技能2号 外食業分野の概要

2023年8月より、外食業分野も特定技能2号の対象に加わり、これまで「特定技能1号」で働いていた外国人材が、一定の条件を満たすことで2号へ移行できる制度が整備されました。

特定技能2号に移行することで得られる主な利点は以下のとおりです

在留期間に上限がなく、更新可能(永続的に日本で働ける)
家族(配偶者・子供)の帯同が可能
外国人支援計画の作成が不要
永住権取得の可能性がある
キャリアの展望が描けるように

この制度は、将来的に中核人材としての活躍が期待される外国人労働者にとって大きなチャンスとなり、企業にとっても定着率の向上と教育コストの削減につながる重要な施策となっています。

2. 特定技能制度と外食業分野の位置づけ

「特定技能」とは、人手不足が深刻な14の分野において、一定のスキルを持つ外国人を就労目的で受け入れる制度です。2019年に創設され、外食業はその14分野の一つとして、当初は1号のみが対象でした。

外食業の具体的な業務内容には、以下が含まれます
✅飲食物の調理(厨房業務)
✅顧客への接客・サービス
✅食品衛生管理や簡易な店舗マネジメント補助

これらの業務は、現場の即戦力を必要とするため、外国人スタッフの需要が非常に高い分野です。

3. 特定技能1号と2号の違いとは?

比較項目 特定技能1号 特定技能2号
在留期間 最長5年(更新含む) 制限なし(更新可)
家族帯同 不可 可能(配偶者・子)
支援計画 必要 不要
業務内容 現場作業中心 管理補助含む熟練業務
試験要件 技能試験+日本語試験 より高度な技能試験+N3以上推奨

4. 外食業で2号に移行するための条件

外食業で特定技能2号の在留資格を申請するには、2つの試験に合格し、定められた実務経験を満たす必要があります。
申請には、学科試験と実技試験の両方に合格すること、さらに一定期間以上の実務経験(指導や管理を含む)があることが必須です。
以下の要件をすべて満たして初めて、特定技能2号の申請が可能となります。

1. 外食業特定技能2号 技能測定試験

外食業における特定技能2号の取得には、「外食業特定技能2号技能測定試験」への合格が必要です。
この試験は、**一般社団法人外国人食品産業技能評価試験(OTAFF)**が主催しており、特定技能2号として求められる技術や知識を評価するものです。試験の詳細については、この後に詳しく解説します。

2.日本語能力試験(JLPT)のN3以上

外食業では、技能試験だけでなく、日本語能力試験(以下、JLPT)のN3以上に合格する必要があります。在留資格の申請前までに合格していなければなりません。多くの分野では日本語能力試験への合格は特定技能2号の取得要件には含まれていないため、外食業の特徴といえます。
N3は「日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる」レベルの日本語力だとされています。

なお、特定技能1号の申請に必要な日本語試験はJFT-basicも対象でしたが、2号からはJLPTに限定さますので、注意が必要です。

3. 指導・管理に関する2年間の実務経験

外食業分野で特定技能2号の在留資格を申請するためには、日本国内の飲食店において、2年以上にわたり複数の従業員を指導・監督し、店舗運営の補助業務に従事した経験が必要とされています。
その実務経験を証明するためには、サブリーダーや副店長などの肩書きを記載した辞令書や職務命令書、勤務シフト表などの書類を提出する必要があります。

注意点として、技能実習、家族滞在、留学などの在留資格中に行った業務経験は、要件として認められません。また、海外(母国)での職務経験も対象外となるため、日本国内での明確な実務経験が求められます。

実務経験に関する経過措置について

外食業が2023年6月10日に特定技能2号の対象分野に追加されたことを受けて、一部の在留者に対して実務経験に関する経過措置が設けられています。

具体的には、2023年6月10日時点で、特定技能1号の在留期間の残りが2年6カ月未満であった人については、その残存期間から6カ月を引いた期間分の管理・指導等の経験があれば、実務経験の要件を満たしたと見なされる可能性があります。

この経過措置により、実際には2年未満の実務経験でも申請要件を満たせる場合があるため、対象となるかどうかを事前に確認することが重要です。

5. 特定技能2号の取得手続きの流れ(外食業分野)

特定技能2号の取得に向けた基本的なステップは、以下の1~4の順で進めます。

  1. 特定技能1号として、サブリーダーや副店長などの役割を担い、2年間にわたり複数のアルバイトや特定技能外国人を指導・監督しながら、店舗運営の補助業務に従事する
    → 役職や業務内容は、辞令書・シフト表などで証明できるようにしておきます。
  2. 日本語能力試験(JLPT)のN3以上を受験し、合格する
    → JLPTの合格は、外食業特定技能2号の申請に必須です。試験の受験順序は、技能測定試験より前後する場合もあります。
  3. 実務経験2年を満たした時点で、「外食業特定技能2号技能測定試験」を受験し、合格する
    → この際には、①で積んだ実務経験を裏付ける証明書類(肩書きや業務内容を示すもの)の提出が必要です。在留資格変更許可申請を行う
    → 在留資格変更許可申請書をはじめとする必要書類を準備し、**最寄りの地方出入国在留管理局または支局(空港支局を除く)**に提出します。

6. 外食業 特定技能2号の試験概要、内容と対策方法

外食業分野における知識や技能を評価する試験です。
この試験は、日本国内の外食業で必要とされる知識や技能を測定するために実施されます。

現時点では、特定技能外国人本人による直接の受験申請はできません。
試験の申込は、その外国人を雇用している企業が行う必要があります。
企業が申し込むには、企業登録申請締切日までにマイページ登録を完了し、企業情報を正式に登録する必要があります
登録には一定の準備期間がかかるため、スケジュールに余裕を持って対応することが大切です。

合格基準は250点満点中65%以上と定められています。

試験対策としては、「一般社団法人日本フードサービス協会」の公式サイトで公開されている学習用テキストを活用することが推奨されます。

外食業技能測定試験学習用テキスト|一般社団法人日本フードサービス協会

試験形式について

外食業特定技能2号技能測定試験は、学科試験と実技試験の2科目で構成されています。
試験時間は合計70分で、すべて日本語で出題されます。なお、漢字にはふりがな(ルビ)は付されていません。
試験は紙ベースのマークシート方式で実施されます。

試験科目について

試験は学科試験と実技試験の2つで構成されており、それぞれの試験で外食業に必要な知識と技能が評価されます。

● 学科試験(120点満点)

学科試験の出題範囲は、衛生管理、飲食物の調理、接客業務全般、店舗運営に関する知識などで、外食業の現場で求められる基礎的な知識が問われます。
日本語で出題され、漢字にふりがなはありません。

項目 主な内容 問題数 配点
衛生管理 ・一般衛星に関する知識
・HACCPに関する知識
・食中毒に関する知識
・食品衛生法に関する知識
10問 40点
飲食物料理 ・調理に関する知識
・食材に関する知識
・調理機器に関する知識
・食品の流通に関する知識
5問 10点
接客全般 ・接客サービスに関する知識
・食の多様化に関する知識
・クレーム対応に関する知識
・公衆衛生に関する知識
10問 30点
店舗運営 ・計数管理に関する知識
・雇用管理に関する知識
・届出関係に関する知識
10問 40点
合計35問 合計120点

● 実技試験(130点満点)

ケーススタディに基づいた問題
電卓使用可(四則演算のみ)
接客中のトラブル対応や衛生ルールの判断など、現場での応用力が問われます

項目 内容 判断試験 計画立案 合計 配点
衛生管理 学科試験と同じ 3問 2問 5問 40点
飲食物調理 学科試験と同じ 3問 2問 5問 20点
接客全般 学科試験と同じ 3問 2問 5問 30点
店舗運営 学科試験と同じ 3問 2問 5問 40点
合計 12問 8問 20問 合計130点

試験対策のポイント

日本フードサービス協会が提供する公式テキスト(多言語対応)を活用
過去問や模擬問題で漢字・日本語の読み書き練習を十分に行う
「衛生管理」「リーダーシップ」「店舗マネジメント」の用語理解

合格者数

2024年度の第1回(5〜6月実施)に全国で実施された「外食業特定技能2号技能測定試験」の結果は以下の通りです。

会場 受験者数(人) 合格者数(人) 合格率
北海道 4 4 100%
宮城 4 1 25.0%
埼玉 3 2 66.7%
東京 64 29 45.3%
石川 2 2 100%
愛知 14 4 28.6%
大阪 11 2 18.2%
広島 1 1 100%
福岡 8 7 87.5%
宮崎 1 1 100%
合計 112 53 47.3%

外食業分野における特定技能2号試験の合格率は、平均して40%を超えており、比較的高い水準となっています。
他の分野と比べても受験者数が多く、合格率も高い傾向が見られます。特に、日本語のみ(漢字にルビなし)で出題されるにもかかわらず、この合格率を維持している点は注目に値します。

なお、試験問題のサンプルは公開されていませんが、学習用テキストの内容からは、指導・監督や店舗管理の補助といった立場に必要な知識が問われることがわかります。
特定技能2号として働く外国人には、店長の補佐や現場のリーダー的な役割が期待されるため、その業務適性が試験を通じて評価されているのです。

7. 外食業界が得られるメリットと企業側の対応

特定技能2号によって、企業側には次のようなメリットがあります:

● 定着率の向上
在留期限がなく、家族帯同もできるため、長期的な勤務が期待でき、早期離職の防止になります。

● 現場リーダーとして活躍可能
管理補助ができるため、新人育成や店舗運営の補佐を任せることができ、人材育成の負担が軽減されます。

● 支援計画が不要
2号は、1号で義務付けられていた支援計画(生活支援等)が不要となり、受け入れの手間が大きく削減されます。

8. 特定技能2号の申請手続きと必要書類

特定技能1号から2号への変更には、以下のステップが必要です。

⬇️ 申請の流れ:
実務経験と管理補助ポジションを証明する書類を準備
技能試験・日本語試験(N3以上)の合格証を取得
出入国在留管理局へ在留資格変更申請を提出

📄 主な必要書類:
在留資格変更許可申請書
技能試験合格証・JLPT N3合格証明書
雇用契約書
役職辞令、シフト表、給与明細などの実務経験を証明する資料
雇用主の営業許可証、法人登記簿謄本など

9. まとめ

外食業における特定技能2号の導入は、人材定着と業務の高度化に大きく貢献

在留無期限、家族帯同可、支援不要という制度設計は、企業にも本人にも大きなメリット

移行には「管理補助経験・技能試験合格・N3以上」の条件を確実にクリアすることが重要

企業は証明書類やポジション設計を前もって準備することが成功のカギ

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