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特定技能2号の試験を解説!問題の内容や費用は?徹底解説

日本の深刻な労働力不足に対応するため創設された「特定技能制度」。その上位区分である「特定技能2号」は、高い技能レベルと実務経験を持つ外国人材に開放された在留資格です。本記事では、その対象分野や要件、試験内容、申込方法、注意点など、最新情報に基づいて丁寧に解説します。

1. 特定技能2号とは

特定技能2号は、特定技能制度の中でも高度な技能水準と実務経験を備える外国人を対象とした上位資格です。2号を取得すると、在留期間の更新制限がなくなり、家族の帯同も可能となります。2023年6月の閣議決定と法令改正により、従来の2分野から11分野に拡大されました。今後も特定技能2号を目指す外国人は増えると思われますので是非内容を理解しておきましょう。

特定技能2号の受け入れ可能な11分野(2024年現在):

建設
造船・舶用工業
ビルクリーニング
工業製品製造業(素形材・産業機械・電気電子情報関連産業)
自動車整備
航空
宿泊
農業
漁業
飲食料品製造業
外食業

2. 特定技能1号との違い

特定技能2号と特定技能1号での違いを説明します。
それぞれの違いについて、在留期間、技能水準、日本語能力等について比較します。

比較項目 特定技能1号 特定技能2号
対象分野(2024年) 16分野 11分野
試験内容 初級レベルの実技・筆記+日本語能力 より高度な実技・管理的な視点が必要
対象となる技能水準 一定の知識・技能 熟練した技能・実務経験
日本語能力レベル 業務や生活等に必要な日本語能力を試験等で確認(技能実習2号を良好に修了した外国人は試験等免除) 試験等での確認不要
在留期間の更新 最大5年(更新制限あり) 制限なし(無期限で更新可能)
家族の帯同 原則不可 配偶者・子の帯同が可能
永住権の取得 不可(1号のみでは申請要件を満たさない) 要件を満たせば申請可能
受入機関、または登録機関による支援 対象 対象外

特定技能2号で求められる「熟練した技能」とは、長年の実務経験などを通じて高度な技能を習得し、現場で作業員を指導・監督できるようなリーダー的な役割を果たせるレベルを指します。
一方、特定技能1号の「相当程度の知識または経験を必要とする技能」とは、特別な専門教育を受けなくても、一定の知識や経験に基づいて業務を自立してこなせる程度の技能レベルを意味します。

3. 特定技能2号の要件

3‑1. 特定技能2号の試験に合格する

2号取得には、分野ごとに実施される特定技能2号評価試験の合格が原則必要です。一部分野では実技・筆記の両方が求められます。日本語能力試験は原則不要ですが、試験自体はすべて日本語で実施されます。
※外食業・漁業分野は、日本語能力試験(JLPT)N3以上に合格する

3‑2. 指導・実務経験を満たす

特定技能1号での就労実績(通常2年以上)があり、かつ指導や管理的な立場に近い経験があることが望ましいとされています。実務経験は、実務経験証明書などで裏付ける必要があります。

4. 特定技能2号試験の特徴

4‑1. 言語は日本語のみ

試験問題はすべて日本語で出題され、他言語による出題や通訳の使用はできません。
特定技能1号試験は母国語でも受験可能ですが、特定技能2号の試験は異なります。
特定技能2号は技術力を持ち、管理や指導も担う人材となるため、技術面のみでなく業務に必要な日本語力があるかを試験で測っていると考えられます。

4‑2. ルビが付かない試験もある

試験は日本語にルビが付く分野と付かない分野に分かれます。現在は外食業・飲食料品製造業の試験ではルビがありません。
※専門用語については母国語で注釈がつく場合もあり。

4‑3. 管理・指導をする立場の人材が知っておくべき問題も出題される

特定技能の試験は、求められる業務を確実にこなせる人材かどうかを評価するために行われます。特定技能2号では、高度な技術で実務を遂行できるだけでなく、従業員の指導や管理、リーダーのサポートといったマネジメント能力も求められます。そのため、マネジメント業務に必要な知識も試験範囲に含まれています。

これらの知識はすべての分野で試験対策用テキストに収録されているため、事前にテキストを活用してしっかり学習しておくことをおすすめします。

5. 特定技能2号試験の費用

試験の費用は分野ごとに違います。

分野 受験料(税込) 合格証明書 交付手数料
外食業 14,000円 結果通知書を自身で印刷
飲食料品製造業 15,000円 結果通知書を自身で印刷
製造分野 15,000円 15,000円
宿泊 15,000円 12,100円(企業が納付)
ビルクリーニング 16,500円 11,000円
農業 15,000円 結果通知書を自身で印刷
漁業 15,000円 結果通知書を自身で印刷
自動車整備 4,800円 16,000円
航空 ※未実施 2025年まで×
建設 2,000円 結果通知書を自身で印刷
造船・舶用工業(溶接) 48,400円(令和5年度)
96,800円(最低料金)
不明(無料の可能性が高い)

分野により特定技能1号の約2倍となります。合格証明書発行に費用が掛かる分野もあります。
基本的に一度予約した試験はキャンセルできません。返金もされないためご注意ください。

6. 特定技能2号試験の申し込み方法

基本的には、各分野の試験公式サイトから申し込みを行います。また、前述の通り、実務経験証明書や、分野によっては誓約書などの提出が必要となる場合もあります。
一部の分野では、電話で受験日時を調整する方法を採用しているため、受験が決まったらできるだけ早く申し込み手続きの流れを確認し、企業側は証明書作成にかかる期間などもあらかじめ考慮しておくことが重要です。

6‑1. 申し込み者は本人?企業?

特定技能2号の試験申し込みについては、本人が手続きを行える分野もあれば、企業が行う必要がある分野もあります。中には、提出書類が企業からのみ受け付けられる分野や、企業による申し込みが事実上必須となる分野もあります。また、本人が申し込み可能な場合でも、受験条件の一つである実務経験証明書の提出には企業の協力が欠かせません。

自社の特定技能外国人が2号の試験を受けたいと相談してきた際には、こうした背景があることを理解して対応しましょう。

6‑2. 必要書類:実務経験証明書

実務経験証明書のフォーマットは、主に各分野の試験公式サイトから入手可能です。分野によっては、Wordファイルなどのダウンロード形式ではなく、オンラインの入力フォームで提出する場合もあります。フォーマットや提出方法は分野ごとに異なるため、特定技能2号取得の相談を受けた際にあらかじめ確認しておくことが大切です。

6-3. 経過措置について

最近になって特定技能2号の要件が定まった分野が多いため、1号で在留中の方の在留期限の都合から、実務経験についての経過措置が設けられている分野があります。
例えば、特定技能2号の対象になった、2023年6月9日の翌日から起算して、5年の在留期限上限まで2年6カ月未満しかない特定技能1号の人については、「2年以上」ではなく、残余期間から6カ月を差し引いた期間の管理等実務経験でよい、といったものです。

7. 特定技能2号試験の注意点

7‑1. 過去の勤務先に対して、実務経験証明書の作成・記載を依頼しなければならない場合がある

特定技能2号の試験を受けるには、一定の実務経験が求められます。この経験年数には、現在の勤務先だけでなく、過去に勤めていた企業での就業期間も含めることができます。そのため、転職歴がある場合には、以前の勤務先に実務経験証明書の作成を依頼する必要があります。

ただし、過去の勤務先と連絡が取りづらい、または関係が良好でない場合、スムーズに取得できないこともあります。そのような場合には、現在の勤務先や登録支援機関が間に入って証明書の取得を支援する必要が出てくることもあります。

なお、過去に雇用していた外国人から実務経験証明書の記載を求められた場合には、できる限り協力することが望まれます。実際に、各省庁も企業に対して記載への協力を呼びかけており、分野によっては出入国管理法に根拠を持つ規定が設けられています。

7‑2. 試験の申し込みに先立ち、事前にIDの発行や受験者登録が求められる分野もあります

分野によっては、事前に受験者IDの取得や団体への登録が必要な場合があります。必ず事前に確認しましょう。

7‑3. 誓約書の提出

在留資格の申請時には、実務経験証明書などの提出書類に虚偽がないことを誓う「誓約書」の提出が求められます。誓約書の様式や内容は分野ごとに異なりますが、多くの場合、受け入れ企業の署名が必要となるため、あらかじめ内容を確認しておくことが重要です。

また、分野によっては、申請者本人ではなく、受け入れ企業が主体となって記載・提出する形式の誓約書もありますので、注意が必要です。

8. 特定技能2号試験の内容

8‑1. 外食業

外食業における特定技能2号の試験は、「外食業特定技能2号技能測定試験」と呼ばれ、学科試験と実技試験の2つで構成されています。

▶︎試験内容
・学科試験では、衛生管理、飲食物の調理、接客全般、店舗運営に関する知識が問われます。
・実技試験では、実際の業務で必要となるスキルレベルが評価されます。

▶︎受験に必要な実務経験
接客業務を含む業務において、複数のアルバイトスタッフや特定技能外国人などを指導・監督しながら働き、サブリーダーや副店長として店舗運営の補助を行った経験が2年以上あることが求められます(指導実務経験)。

8‑2. 飲食料品製造業

飲食料品製造業における特定技能2号の試験は、「飲食料品製造業特定技能2号技能測定試験」と呼ばれ、学科試験と実技試験で構成されています。

▶︎試験内容
学科試験では、一般的な衛生管理、HACCPの基礎、品質管理、納期管理、コスト管理など、製造現場で求められる知識が問われます。
実技試験では、業務上必要とされる技能のレベルを評価します。

▶︎受験に必要な実務経験
飲食料品製造業の現場において、複数の従業員を指導しながら作業に携わり、生産工程を管理する立場での実務経験が求められます。

8‑3. 工業製品製造業

工業製品製造業分野における特定技能2号の試験は、「製造分野特定技能2号評価試験」と呼ばれます。
試験は機械金属加工区分、金属表面処理区分、電気電子機器組立て区分に別れて実施されます。

▶︎試験内容
①学科試験
各区分に応じた専門知識が問われます。
・機械金属加工区分:安全衛生管理、品質管理、検査、測定、製図、標準作業、機械の操作・管理、金属加工など
・電気電子機器組立て区分:安全衛生管理、品質管理、電気、製図、器具、機械応用、電気応用など
・金属表面処理区分:安全衛生、公害(排水処理)、検査・測定・品質管理、材料、化学、電気、めっき、アルミニウム陽極酸化処理など

②実技試験
実際の作業手順や材料に関する設問を読み、正しい内容を選ぶ形式で行われます。

▶︎受験に必要な実務経験
日本国内に拠点を持つ製造業の職場において、3年以上の実務経験があることが受験の要件となっています。

8‑4. 農業

農業分野における特定技能2号の試験は、「農業技能測定試験2号」と呼ばれ、特定技能1号と同様に「耕種農業」と「畜産農業」の2つの区分に分かれています。

▶︎試験内容
学科試験では、それぞれの分野に関する知識が問われます。
・耕種農業区分:耕種農業に関する技能や安全衛生管理などに関する学科および実技の内容
・畜産農業区分:畜産農業に関する技能や安全衛生管理などに関する学科および実技の内容

実技試験では、実際の作業手順や材料に関する設問が出題され、正しい選択肢を選ぶ形式で実施されます。

受験に必要な実務経験
農業分野での受験には、現場管理者として2年以上の経験、または現場での作業を含む3年以上の実務経験

9. 試験合格のためには日本語力の強化が重要

特定技能2号試験において、日本語能力は合否を左右する重要な要素です。

特定技能2号の試験では、熟練した技能や管理に関する知識だけでなく、業務上必要な日本語でのコミュニケーション力も重視されます。
専門知識が求められるのは当然ですが、中には日本語を理解していれば正解できる問題もあれば、知識があっても日本語が読み取れずに解答できない問題もあるため、日本語能力が試験の成否を分けるポイントとなっています。

実際に私たちが見ている限りでは、2号試験に合格するためには、日本語能力試験(JLPT)のN3~N2レベル程度の語学力が必要と感じられます。
特定技能1号を取得する段階では通常N4レベルの日本語力があるとされていますが、2号取得を目指すには、その後も日本語学習を継続してきたかどうかが試されることになります。

これから2号取得を目指す外国人の方、またその支援を行う企業の皆さまにおかれましては、まずは日本語力の向上に取り組むことを強くおすすめします。

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